さぁ、一緒に出かけよう 「デートっ!?」 レイの突然の誘いに俺は思わず間抜けな声を発した。 そんな俺をみてレイは心なしか微笑んでいる。 レイがそんな事言うなんて、意外で俺はどうしたものかと視線を向けた。 「久しぶりの休暇が取れたしな。それに上陸許可も出ている」 逃がす手はないだろ? そう言われて、もちろん俺に断る理由もなく2つ返事で返した。 それにしても、デートなんて・・・初めてかもしれない。 俺達軍人は海の上か空の上だし、休暇って言ったら日頃の疲れを癒すためのもの。 そんな浮かれた気持ちなんて持てる暇も無くて、恋人として過ごす時間といったら・・・夜ぐらいしかないし。 かといって夜に甘い時間を作るのも次の日に差し支えが出てしまったりで。 本当、つくづく俺達って不運な運命にいるよな、なんて矢探れた気持ちにもなってしまうのだ。 だから、レイがいきなりそんな事を言ったのが実は天にも上るくらいに嬉しかった・・・っていうのは心の奥底に閉まっている。 ご機嫌なまま、俺達は私服にへと着替えると、共にミネルバを後にした。 「どこ行くの?」 歩き出して俺はチラリとレイをみながら尋ねる。 「とくに決まってはない。その辺を歩き回るか?」 「ん、それでいーよ」 こんな感覚初めてで、俺は嬉しさを隠せず思わず笑みを浮かべて返事をした。 あーーーっ!すっごい嬉しいっ!! ピンク色の空気がどこかくすぐったくて、でも嫌いじゃなくて。 歩いているだけなのに、こんなにも有頂天な気分になるなんて俺って変かも。 「じゃ、どこかの店に入るか?」 「うんっ!じゃあ・・・あそこ!」 俺はルンルン気分で洋服店を指差した。 「あぁ、そうしよう」 レイはそんな俺をみてにっこり笑うと、店に向かった。 レイと一緒に店に入るなんて、初めてで俺はなんだか違和感があるような・・・なんともいえない不思議な気分。 なんだか付き合い始めて1ヶ月の甘々カップルみたいだ。 「シン、これはどうだ?」 洋服を物色していると、突然レイが洋服を片手にそう言った。 「うん、そういうの好きだよ」 「着てればいい」 「えっ!今?」 「今」 突然の言葉に俺は戸惑いつつも、レイに促され試着室にへと入った。 レイが選んだ洋服は、すごくセンスがよくてどこか可愛げがある。 シャッっとカーテンを横切って俺はなんだか恥ずかしげにレイをみた。 「ど、どう・・・かな?」 じっとレイは俺をみる。 は、恥ずかしい・・・・・っ!!! 「似合ってるよ」 にっこりと微笑まれてそう言われ、思わずドキっと胸が高鳴った。 俺は特にその言葉に何か言うでもなく、シャッっとまたカーテンを閉める。 何を言えばいいのかわからないくらいに・・・・恥ずかしかった。 照れ隠しに勢いよくカーテンを閉めた俺は着替え終り、試着室から出た。 「これください」 試着室をでた瞬間にレイはそう言って、お金を払ってしまった。 「レイ!俺が払うって・・・!」 「いいから、今日は俺に甘えていろ」 「っ・・・・・・」 その言葉に押されて俺は押し黙った。 なんか本当、よくある恋人のデートシーンって感じで。 そんなのテレビドラマとか漫画とかで読んでも『バッカじゃないの』って批判して終わってたけど。 実際されてみると案外嫌じゃないも・・・・、なんて浮かれた思想になる。 2人で店を出ると、今度はお腹もすいたためレストランにへと入った。 こんな2人でレストランとか、何もかもが初めてで向かい合って座る席がどこかむず痒い。 注文を頼んで、しばらく2人の時間が流れる。 カチャカチャと食器が擦れ合う音とか、周りの人の話し声とか、なんだかやけに耳に響いてしまう。 こんな雰囲気初めてだ。 「いつもと今日は違うな」 レイはくすりと笑ってそう言った。 「べっ、べつに!普通だよ!」 俺は勘付かれたくなくて、ツンとそう言った。 「どうかな」 「なっ!そんな事言ったらレイだって変だろっ」 「どのへんが?」 「どっ、どのへんって・・・・・」 俺は勢いで言ってしまった事に突然質問にあってしまい、答えがみつからず悔しげに黙り込んだ。 な、なんか俺・・・すっごい性質の悪いガキみたいじゃん。 「おまたせいたしました!」 そんな時にタイミングよく頼んだ料理が運ばれてきて俺はホッ胸を撫で下ろす。 俺はレイをチラリと見ると、料理を食べ始めた。 「・・・・・・なぁ」 しばらく料理を食べていた俺は、戸惑いがちにレイに話し掛ける。 「なんだ?」 「食べないの?」 手を付けられていない料理を指差して俺は言った。 何故だかレイはじっと俺が食べているのをみつめたままでいる。 それが耐え切れず俺は話を切り出した。 「あぁ、忘れてた」 「な、なにそれ・・・・」 惚けたレイの台詞に俺は呆れた声をだす。 もしかしてレイも今日の『デート』が嬉しかったりするのかな? そう考えるとどこか嬉しくて思わず笑った。 「何を笑ってるんだ・・・・」 「え?あ・・・なんでもないっ!」 俺は慌てて料理を口に運ぶ。 俺達はそんな風に過ごしながら料理を完食すると店をでた。 しばらく外を歩いてまた店に入ったり、辺りをブラつく。 そんな事をしている時に、ふとレイが俺の手を握った。 「レ、レイっ!?」 「『デート』だろ?」 「そっ、そうだけど・・・・」 手を繋いで歩くなんて、恥ずかしいじゃん!! 「嫌だったらいい」 レイはそう言って繋いだ手を離した。 「い、嫌じゃない!!!!」 俺はなくなった温もりがどこか寂しくて、思わずそう叫び咄嗟に手を握った。 レイはそんな俺をみてにっこりと笑う。 「行くぞ」 そうして俺達は繋いだ手をぎゅっと握りなおして歩き出した。 そうこうしているうちに、どんどんと時間はなくなってしまい、俺達はミネルバが泊まっている海まで行くと浜辺に座った。 オレンジ色の空と、赤く染まっている海、その中に溶け込んでいきそうな夕陽が眩しくて、キラキラ光る海もどこか哀愁が漂っている。 レイの奇麗な金色の髪も赤く染まっていた。 「奇麗・・・・・・・」 思わずそう口走ってしまい、俺は慌てて口を塞いだ。 「どうした?」 レイが不思議そうに顔を覗き込む。 「なんでもない!」 「変だな」 レイは笑ってそう言った。 俺は恥ずかしくてレイから顔を背ける。 しばらく静かな空気が流れた。 時折靡く風が俺の髪を撫でる。 まだ少し冷たい風が、どこか寂しかった。 「2人で出かけるなんて初めてだな」 最初に沈黙を破ったのはレイだった。 「あ、うん・・・だよな」 「どうだったか?」 「え?」 「楽しかったかと聞いてるんだが」 レイは少し照れているのかいつもとはちょっと違う雰囲気。 「嬉しかった」 ちょっと質問とはずれた俺の答えにレイはどこか不思議そうな表情をする。 「嬉しい・・・?」 「そ、嬉しかった。こんな風に普通のカップルみたいな事できてさ。何もかもが初めてでちょっと恥ずかしかったけど」 俺は照れ隠しに笑ってそう言った。 「そうか」 レイはとびっきりの笑顔を向けた。 俺はまた視線を目の前の海にへと戻す。 沈んでいく夕陽の美しさがどこか痛かった。 俺は少し黙り込む。 また静かな時間が流れて、レイは何かを話すでもなくただ真直ぐにその景色を眺めていた。 「こんなふうに・・・・・・・」 「え?」 突然俺が口を開き、レイは一つ聞き返す。 それでも俺達は真直ぐに見据えた視線ははずさなかった。 「こんなふうに、奇麗で・・・美しい景色があるのに、この世界は汚いんだな」 「・・・・・・・・」 レイはただじっと俺の言葉を聞いていた。 「俺達は戦って、殺し合いをして・・・いつ終わるかもわからないこの戦争を止めれる力もなくて・・・・」 そまった赤色の海が――――どこか痛い 「俺達、付き合って結構たってるのにデートすら初めてでさ。きっと異常なんだよな」 レイはただ俺の話を黙って聞いてくれた。 「それでも、戦争があったから俺達は出会ったんだよな・・・・・・・」 それはあまりにも残酷で・・・・寂しい運命 「でも俺・・・・やっぱ・・・・」 俺は少し俯いて言葉を詰まらせた。 ヤバイ・・・・・泣きそうかも。 「俺・・・・・」 それでもただ何も言わずにいてくれるレイの優しさが嬉しかった。 「俺・・・戦争がない時代にレイと出会いたかった」 それは嘘偽りの無い心からの本音。 もしも、こんな時代じゃない時に出逢えたなら・・・幸せだったのだろうか? 「・・・・それでも俺は今シンと出会えた事に感謝している」 レイはそっと呟くように言った。 俺は思わず泣きそうな顔のままレイをみる。 「今はそれで十分だ」 こんな時にでも出逢えた事が・・・・唯一の幸せ。 そう思っていいのかな? 「レイ・・・・・・・」 そっとレイに触れる。 レイはぎゅっと力強く俺を抱きしめた。 お互いに視線を絡み合わせて、しばらく見つめる。 そのままゆっくりと流れる時間にまかせて瞳を閉じた。 触れる唇の感触がただ・・・・・優しかった。 レイと出逢えた事。それは唯一の幸せ。 それでも、もしも戦いの無いそんな世界があったなら・・・・ その時はまたこうして出かけよう。 それは唯一の――――望 end |
レイとシンのデートが書きたくなりましてこうなりました; なんかいちゃいちゃらぶらぶな2人が頭に浮かびまして。 普通のありきたりな恋人同士ってゆうの、実は嫌だとか言いながらシンは好きそうだなぁ・・・と。(笑) ちょっとダラダラした感じになってしまったんですが; 今回はエロなしなんですが、エロ入れると長くなるのがちょっと楽ですよね。(ぇ) 2005.03.27 Rinko |