――――――――――同室なんて卑怯だ。


























求めるモノ

























『さすが奇麗事はアスハのお家芸だな!!!!!!』

たえられなかった。アイツの言う言葉と態度が。

どうしても・・・・許せなかった。

「何も判ってない様なヤツが、判った様な事言わないでほしいね!」

まだ、罵ってやりたかった。

傷つけて、めちゃめちゃに壊してやりたい。俺のこの憎しみと絶望感が消えるなら。

この苦しみから逃れられるなら、例えそれが非人道的だと批判されても構わなかった。

どんな人間から嫌われ様が、構わないはずだった・・・・・。なのに・・・・―――――――――


「シン!言葉に気をつけろ!」


発せられた言葉に、思いのほか衝撃を受けてるなんて思いたくない。

だけど、その瞬間どこかが苦しく感じさらに怒りは止められずさらにアイツに詰め寄った。

瞳を潤ませながら、思いっきり罵ってやった。

自然と湧き上がる涙をこらえながら。

これはマユや、父さん、母さんの事を思い出しての涙だけど・・・・

でも、もう一つ理由があるような気がする。

俺は一睨みきかせると、逃げるように部屋を飛び出した。

後ろから追いかけてくる人の影。だけど振り返る事なんてしたくなかった。

――――否、できなかった。

どうも涙腺が最近緩みっぱなしらしい。感情の気丈が激しくなると自然と零れてしまう。

全てを失ったアノ日から涙を流さない夜はなかったし、思い出すだけでもリアルに再現されて。

だけど、友人や知人に泣き顔なんて見せたくないというプライドがあって俺は逃げ切ろうと部屋へ走った。

扉が開く音と共にベットへ走る。瞬間、机の上にあるピンクの携帯もとっさに握った。

そして、隣のベットをみつめてしまう。

『シン!言葉に気をつけろ!』

思い出すのは彼の言葉。なぜだか、その言葉が・・・・・痛かった。

俺の気持ち、わかってよ!!!

そんな事を思ってしまうなんて。何を求めてるのか自分でもわからないもどかしさに携帯をさらに握りしめる。

「うっ・・・・・ふっ・・・」

声を押し殺しながら泣く姿はひどく情けないものだと思うけど、でも、それ以外に行動はなかった。

その時、扉が開く音がした。ビクっと背中が強張った。

レイだ!!!!!!!!!

どうしよう どうしよう どうしよう!?!?!?!?

途端に頭はパニックに陥る。こんな時に帰ってくるなんて間が悪い。ひどすぎる。

そう、レイとは同室なんだ。いつ帰ってきてもおかしくはないが・・・・

不思議とレイと同室とゆうことは素直に嬉しかった俺だが、今は・・・

同室であることが憎い・・・!!

背中に人の気配を感じた。・・・・・・ヤバイ。今この姿をみられるのはやっぱり嫌だった。

どうしたものかと必死に頭を張り巡らせて、とりあえず寝たふりという至極単純な考えとなった。

途端、後ろから微かな微笑の声が聞こえた。

・・・・・レイが笑ってる!?

あの無表情の堅物男の笑顔。少し、いやかなり見てみたい気はするがそれよりも俺のプライドのほうが勝った。

「まるで子供だな」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。これには少しカチンっとくる。

「寝たふりなんぞ、バレバレだ。シン」

「・・・・・・・わかってんなら言うなよ」

あえて顔は隠したままで、恥ずかしさに耐えながら俺は絞るように声をだした。

途端、いきなりグイっと体を反転させられてレイの奇麗な金色の透き通ったような髪が視界に入った。

「な!!!!」

驚きの声をあげるが、目の前の人物はどこか微笑んでいる。

瞬間、瞼に何かが触れた。思わずぎゅっと強張り目を瞑る。

チュッ

何かの音がした。・・・・・チュッ?????いや、まさか・・・・そんなはずはないが・・・・。

恐る恐る目をあけると、視界一杯のレイの顔。

「な、ななななななんだよ!?」

「お前の言った事も正しい。そう詰め寄ってしまうのも仕方のない事だ」

いきなりそんな言葉をかけられて。

微笑みから鋭い眼差しに切り替えられて。

なんでコイツは、俺の求めている何かをみつけるのが上手いんだろう。

『シン!言葉に気をつけろ!』

誰に嫌われても構わないなんて、そんなの嘘だった。

どうしてか、レイにだけは・・・・わかってほしいと願ってる自分がいて。

またそれを認めるのも嫌だった自分がいた。

「あの時は、オーブの姫とゆう建前上の言葉だ。気にする事はない」

「な、なんだよ・・・・」

なんで、この人はわかるのだろう?

「今の言葉じゃ不満か?ならば、お前に愛の言葉でも囁けと?」

「あ、愛のこ・・・・!?!?!?!?!?!?」

何を言い出すのかこの男は。俺は瞳孔を大きくさせ今だ至近距離をたもっているこの状態から逃れようと顔を背けた。

「そうだな。例えば・・・・」

レイはひどく楽しそうな声でそう言うと、ふっと耳の近くに詰め寄った。

「愛してる・・・シン」

「※△!*?§£」

声にならない声を発してしまった俺は首から上が火傷したように熱い。

「どうした?これも不満だったかな?」

くっくっくっ・・・と笑うレイの声がきこえ、まだ体の火照りが冷めない俺は心臓の爆発しそうな音で死にそうだ。

・・・・・遊ばれてる。

確かにそう思ったけど、この火照りの理由はどうにも俺のプライドとは反対なものらしい事はわかった。

嘘・・・俺まさか・・・レイのこと・・・!?

考えたくない悪夢のような自分への問いに、悩まされしかし否定できない自分自身にさらに火照りが増す。

だって俺・・・・嬉しくて今・・・・死にそう。

あーもう!俺・・・・変だ。

そんな事を思いながら必死に顔の火照りと心臓の音を静めようと頭に言い聞かせる。

「シン、顔が赤いぞ」

そう言って背けた顔をまたレイのほうに向けさせられた。

なんで、レイはそうやって俺に恥をかかせようとするのだろうか。

「熱でもあるのか?どれ・・・」

そう言ってレイは顔を近づけてきた。おでこで体温でも測られるのだろうか!?

そんな妙な期待感を考えつつぎゅっと再び目を瞑った。

チュッ

再びさっきと同じ音がなった。

・・・・・・・・・・・・。

「〜〜〜〜〜〜〜!※*△?¥§!」

俺は声にならない声をまただしたが、それが部屋に響く事はない。

なぜなら、今レイは俺の唇に自分の唇を合わせ、なおかつ驚き少し口が開いた隙に舌を滑り込ませたからだ。

キ、キスされてる・・・・!?

長いキスのあと、ようやく唇が離れた。

「っは・・・ぁ・・・。って・・・何してんだよ!?!?レイ!さっきからお前変だ!!!!」

さっきの心臓の音が更に早く動いている。

顔の火照りも極限状態だ。

「嫌・・・か?」

・・・そんな聞き方ズルイと思う。もう俺の気持ちわかってるだろうと思うけど。

「嫌・・・・・なわけでは・・・ナイ・・・けど・・・・」

段々と声が小さくなりながらそう言った。

今俺は、言葉を発するのはやっとのことで、心臓の早すぎる脈拍と熱くなりすぎている火照りで気絶寸前だ。

恥ずかしいけど、どうやらひどく・・・レイに弄ばれているようだ。

「シンがあまりに可愛い理由で泣くものだから。歯止めがきかなくなってしまったようだな」

本当に、今日のレイは変だ。

「シンはこんな俺は嫌いか?」

また反則技だ・・・・。

「嫌いなわけ・・・ないだろ!」

「そうか。よかった」

そう言うとまたレイは笑った。一日にこんなに何度も笑うレイをみるのは初めてで少し嬉しく思う。

「俺はもう行かなければならないんだが・・・・・シン。目の腫れがおさまってから部屋を出るように」

「え?あ・・・うん」

そう言うとレイは部屋を出て行った。

後に残るのは喪失感と、そしてさっきまでにおきた数々の驚愕な出来事に対する驚き。

なんとなく、俺ずっとレイに何かを求めてて、でもそれがわからなくて。

時として涙に変わってる時もあったりして。そんなことレイは知らないんだとばかり思っていたのに。

あんな事されて、言われたら・・・・俺これ以上にレイに何を求めるのだろうか?

でもとりあえず今は、この浮き立つような幸福感に浸っているとしよう・・・・―――――――





















end


初書きのレイシンです。種運命のなかでこれほどまでに萌えたCPはありません。大好きです!
なかなか楽しく書かせてもらいました!レイのキャラが崩れないように崩れないように書いたツモリなんですが;
実際は難しい物ですねー;ああいったキャラって甘い台詞を吐くのか吐かないのか。好みによって違うとは思いますが;
シンは生意気な部分を甘い空気の中でも保って欲しいなぁなんて個人的な思考が入っておりますが。
でも、レイシン書くのすごく楽しかったので、これからガンガン書いていきたいと思います!

2004.12.20 Rinko