消え入りそうな後姿 儚く俯く美しく、そして時に鋭いその瞳 漆黒のその髪が、闇に溶け込んでしまいそうな錯覚に陥り胸は激しくざわめく 確かめるように ゆっくりと 愛しさを込めて 抱く夜も 胸を締め付ける思いは消える事は無い―――――――― ![]() いつもの朝がやって来た。 目をあけると早朝のミネルバはまだ静けさを残している。 隣に目をやると、まだ寝息をたてて眠っているシンの姿があり、思わず口元が緩んでしまう。 一足先にシャワールームに入ると、徐々にはっきりと目が冴えてきた。 昨日は激しい戦闘があったためか、未だに疲れは取れていない。 きっと、シンも同じ状態であろうことは予測がつく。 ギリギリまで寝かしてやろう、と心の中でそっと呟いた。 シャワールームから戻ると、そこには支度をしているシンがいた。 「起きたのか?」 「なんか目がさめちゃって」 シンは少し歪んだ笑顔を向けた。 上手く笑ったつもりなのであろうが、その異変に俺が気づかないはずがない。 いつもの、あの輝く笑顔とは様子が違う事くらい、俺は瞬時に見極める。 「どうした?気分でも悪いのか?」 俺がそう言うと、シンは少し驚いた表情を向けた。 さしずめ、『なんで?』とでも考えているのだろう。 「まぁ、ちょっと・・・あんまり眠れなくてさ」 シンは戸惑いがちにそう言った。 また・・・・・ シンは、どうしてか自分の弱い部分を隠そうとする。 人に心配されないように、一人で抱え込みそして一人で泣くのだ。 俺という存在に頼って欲しい、その願いは未だにシンに届いていない。 「何かあったのか?」 「たいしたことじゃないって。ホント、ただ疲れてるってだけだし」 それ以上聞いても、きっと答えてはくれないのだろう。 俺はそう確信し、少し小さな溜息をつくとシンの頭を軽く撫でた。 「無理はするなよ」 優しく笑ってそう言うと、シンは嬉しそうに頷いた。 心を染める甘い色。 思わず、触れるだけのキスを送った。 少し驚いた様子のシンは、へへっと一笑いすると部屋を出て行った。 その後姿を最後までみつめると、また一つ溜息を吐く。 壊れた破片を元に戻すのには、限りなく時間がかかる。 俺はまだその破片を探しているところなのか・・・・ 大事なパーツが、なかなかみつからないもどかしさに拳を握り締めた。 「コンディションイエロー発令。コンディションイエロー発令・・・・」 艦内に鳴り響く警戒音と、メイリンの声。 再び俺達はモビルスーツに身を包んだ。 ちらりとシンのほうに視線をむけると、その瞳とぶつかった。 『大丈夫だよ!』 そんな笑顔をむけられ、俺は苦笑する。 昨日の今日だ。油断はならない。 俺はヘマはするなよっと視線をむけると、シンはわかってると言わんばかりに軽く頷いた。 シンの実力に心配はしていない。 だが、自我を失いそうなシンが時々恐かった。 「考え事か?」 ふいに隣から話し掛けられ、俺は振り向いた。 「いえ、大丈夫です」 ザラ隊長は、俺の肩を数回叩くと苦笑した。 「シンは大丈夫だよ、そう堅く考えるな」 「わかってます」 俺は一言そう言うと、軽く会釈をし、搭乗機にへと向かった。 ザクに乗り込むと、出発準備を整える。 「ザク、レイ・ザ・バレル機、どうぞ!」 メイリンの高い声が響いた。 「レイ・ザ・バレル、ザク、発進する!」 そして再び戦場にへと駆けて行った。 「はぁ・・・・・」 激しい戦闘も終り、一息ついていると隣から大きな溜息が聞こえた。 2人しかいないこの部屋に、それはよく響く。 ベットに腰掛け、シンが何やらまた一人で考えに耽っているようだった。 俺はシンの元にへと歩くと、その隣に座った。 「何か悩みがあるなら、相談してくれてもいいんじゃないか?」 俺がそう言うと、シンは困惑した様子で顔を上げた。 今にも崩れ落ちそうな、そんな錯覚に陥る。 掴んでおかなければ、どこかに行ってしまいそうな気がした。 「レ、レイ・・・・?」 気がつけば、シンを強く抱きしめている自分がいた。 戸惑っているシンの声が胸に響く。 「俺はそんなに、頼りないか?」 「そんなことはっ・・・・」 シンは言いかけて俯いた。 ゆっくりと腕をシンから離す。 シンは、苦しそうな顔をして俺を見上げた。 「一人で悩むな。こっちが辛い」 そう言った俺に、シンはまた歪んだ笑顔を向けた。 「なんでもないってば!大丈夫だって」 そう言って、逃げるようにシンは起ちあがる。 そんな事、許すはずもなかった。 ぐいっとシンの腕を掴むとそのままベットにへと倒れ込む。 瞬時にシンを覆い被さるような体勢になり、俺は強引に唇を奪った。 「んっ・・・・!」 シンの手が、俺を押しのけようと抵抗する。 だが、俺はそのまま激しく唇を犯し続けた。 繋げとめておきたいと、捕まえておきたいと、 逃げ出さないようにと――――――― いつだったか、シンの後姿が透けたように遠くに見えた事があった。 俯く横顔と、一人ですすり泣く少年の姿が確かにそこにあった。 その時は、側に寄れる自信がなく、ただその後姿をじっと見据えるだけだった。 暗い暗い星一つない黒い世界の下で、そのまま漆黒の髪が溶け込んでしまいそうな気がした。 すぐにでも、俺の目の前から消えてしまいそうな・・・・そんな気がしたのだ。 そう、確かに・・・・『恐い』と思った。 また俺は、見つめるだけの偽善者になるのか? 自問自答に、答えはなかなかみつけだせなかったが今ようやく、みつけたような気がした。 「何故お前は俺に全てをみせようとしない?俺はずっと待っていた・・・!」 「レイ・・・・!?」 突然の荒げた声に、シンは目を丸くさせ固まっていた。 「俺はお前が好きだ・・・・・」 囁くようにそう言うと、シンは切なげに横を向いた。 「俺では、ダメなのか・・・・?」 俺の力では救えないのか――――? 「ち、違う・・・・!違うんだ・・・・・っ」 シンはその真紅の瞳から、奇麗な涙を零した。 流れ出る雫は止まらず、俺をそのまま見上げる。 「レイ・・・抱いて」 小さく、呟くようにシンはそう言った。 その言葉に、俺は再び深いキスを送る。 確かめ合うように、お互いに舌を絡ませて、夢中で口付けた。 ゆっくりとシン自身に手が触れると、甘い吐息が聞こえる。 優しくシンの弱い個所を攻めると、快楽にシンの顔が歪んだ。 「あっ・・・んん・・・レイ・・」 空いた手で、胸の突起に刺激を送るとシンの腰が反応した。 「ふぁっ・・・はぁん・・・」 脳を貫くような甘い声に、官能的な気分が高まりだす。 俺は夢中で、刺激を送りつづけた。 次第に聞こえる吐息も荒くなり、厭らしい水音も響き始める。 「あっんっ・・・もっ・・俺・・・イっちゃうっ」 赤く火照った頬で、シンは甘くよじろいだ。 「ひゃんっ・・・ふぁぁぁ・・・あぁぁぁっ!」 一際大きな喘ぎ声が響いたと同時に、白濁としたものが放たれる。 余韻にひたり、未だ息を荒げているシンに、俺はそっと指を挿入した。 「んぁぁぁぁっ」 ビクリとシンの体が跳ね上がる。 俺は、優しく包み込むように抱きしめながら指を動かし始める。 再び、甘い声が休む事無く響いた。 「はっ、あぁんっ・・・んぁっ・・ふぅ・・・あっ!」 俺の指の動きに合わせるかのように、シンの甲高い声がする。 それだけで、俺のモノはどくんどくんと高ぶり、早く感じたいと疼き始める。 「シン・・・いいか?」 優しくそう囁くと、シンは俺の背中に腕を回した。 「おねがっ・・・・キテ」 自分からそう言うシンは初めてで、思わず微笑む。 俺は、すっかり出来上がった自分自身をシンの蕾にそっとあてた。 ゆっくりと、優しく入れていく。 「はぁ・・・・あ・・・・あん・・・」 溜息まじりのシンの声が聞こえた。 優しく、優しくシンを抱く。 全てが収まった事を確認すると、ゆっくりと腰を動かした。 「んんっ!ふぅあ・・・っあぁぁぁっ・・・・ひゃあっ!」 シンのイイ所を徐々に深く突き上げていくと、次第に物音が激しさを増していった。 パンパンっと体が擦れあう音。 シンの甘く高い喘ぎ声。 気分を高める水音。 どれも全てが胸を高ぶらせ、腰の動きも激しくなる。 「あっ・・・!あぁぁぁっ・・すごっ・・・レイっ・・んぁん・・・!」 俺の中で乱れ咲くシンが美しく、俺はそのまま胸にくっついてしまうのではないかと思うほど、シンの足を曲げた。 途端に深くなる挿入感。 「ふぁぁぁっ・・・深っい・・あぁっ!ひゃんっ・・あっ」 段々と、余裕がもてなくなり始め俺は夢中で腰を振った。 シンの声が一層高くなっていく。 「あっ!ダメっ・・・あぁぁっ!んあぁぁぁぁぁ!!」 「くっ・・・・」 そして俺達は、同時に果てた。 「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」 辺りを包む気だるさと、荒い息。 シンはゆっくりと口を開けた。 「なんでっ・・・戦争なんかあるんだろ」 俺はシンをじっとみつめた。 「なんで・・・・俺達はずっと戦いつづけるんだろう。俺もう・・・・わかんなくなった・・・・」 ぽろぽろとシンはまた涙を流した。 「守るため、だろ」 俺の言葉に、シンは切なげに俺をみつめた。 その鋭い眼差しには目を逸らせない。 「守るったって・・・・!俺にはもう・・・誰も・・・いないんだ・・・・」 父さんも 母さんも マユも みんな もういないのだから そんな悲痛な声が届いた気がした。 あぁ、きっと見失ってしまったのだ。 戦う理由を、奪い合う命の理由を・・・ そして何より自分の居所を・・・・・ 「俺は、シンのために戦う」 「俺の・・・ため?」 シンの言葉に俺はゆっくりと頷いた。 「お前が俺の帰る場所だから。シンの帰る場所も・・・俺の胸であって欲しい」 シンの瞳が大きく開いた。 「お前の居場所は此処だ」 そう耳元で囁くと、シンはひたすら涙を流した。 何度も何度も頷きながら、奇麗な涙を流した。 きっと、恐かったのだろう。 もう、誰一人自分の側にいる人がいないのだと再認識してしまった時。 自分の存在理由がわからなくて、そんな自分が人の命を奪うとい事が苦しくて堪らなかったのだろう。 もっと早く、気づいてあげればよかった。 そして何より、この終わらない憎悪が生み出す闘いがひたすら許せなかった。 「レイ・・・・・」 シンはそっと俺に腕を伸ばした。 伸ばされた救いの手を、俺は優しく引き寄せた。 end |
今回はレイ視点で書いてみました。伝えたい事、伝わりましたでしょうか? ちょっと難しい小説みたいになっちゃったんですが;(汗) 深読みしてもらわないと理解できないかもです;ハイ。 シンって相当辛い思いをしてるから、不安定な感じがあると思うんですよ。心に影があるっていうか。まぁそんな感じなんですけど。(勝手なイメージ) なかなか立ち直れないと思うんですよね。そこを補うのがレイという大きな存在であってほしいなぁと。 密かな希望です。(笑)あと、やっぱシン視点が一番書きやすいとハッキリわかりました。シン視点で行こう! 2005.3.7 Rinko |