いつもの変わらないミネルバの日常。

その日もレイとシンは相変わらずの甘い雰囲気を漂わせている・・・・・はずだった。























近々迫った対戦の作戦説明に、俺は少し退屈しながらもザラ隊長の話に耳をかたむけていた。

だけど、なんだか同じ事の繰返しの説明に段々と眠気が増してきて思わずあくびを一つしてしまう。

その途端、鋭い瞳のザラ隊長とバッチリ目が合った。

あ・これマズい空気?

「シン!!今何の話をしているかわかってるのか!!しっかり聞いてろ!」

そのザラ隊長の言葉にカチンっと頭にくる。

なんだよその言い方!!気に食わない!

「聞いてますよ!あくびくらい、人間だからするもんでしょ!」

「まるで子供の言い訳だな」

笑いをこめた言い方に、俺は益々カッとなった。

「だからちゃんと聞いてるからいいだろ!?大体、作戦も何もそいつらぶっ飛ばせばいい訳じゃん」

「シン!何度言わせればわかるんだお前は!これはお前一人の問題じゃない。お前の勝手な行動で仲間を死なせるかもしれないんだぞ!」

「わーかってますよ!!」

そんなの、知ってるに決まってんだろ!!

「シン、いい加減にしろ。ザラ隊長に謝れ」

隣に座っていたレイが冷めた口調でそう言った。

思わず俺は眉を上げレイをみる。

相変わらずの無表情がそこにあって、益々腹が立った。

「はいはい、どーせ俺が悪者なんだろ。どーもすみませんでした」

捻くれたようにそう言い放つと俺は顔を背け、イラだったように腕を組んだ。

なんだよレイの奴・・・・!!!あんな言い方しなくってもいいじゃないか。

大体いつもそうなんだよ。こうやってプライベートじゃない時間はレイは厳しいんだ。

戦闘が終わった後とかダメ出ししてくるし・・・・!!!

なんか、ムカツクっ。

イラだったまま俺は部屋へと戻ると、隣のレイのベットをみた。

あんな言い方しなくったっていいじゃん・・・レイの奴。

ちょうどそう思った時、ドアの開く音とともにレイが帰ってきた。

思わずキッと睨みつける形になる。

レイは一つ溜息をはくと、何事もなかったかのようにシャワーをあびようと軍服に手をかけた。

「あんな言い方しなくってもよかったんじゃないのっ!?」

俺はムスっとした態度を露にそう言い放った。

レイはぴたっと一瞬動きを止めると、ゆっくりと振り返る。

「何の事だ?」

「とぼけんなよ!わかってるだろ!何だよ、結局お前もザラ隊長の味方ってわけ?」

「そういう問題じゃないだろ」

「だってそうじゃん!!俺が気に食わないならそう言えばいいだろ!!!」

声を荒げてそう言うと、少しレイはムッとした表情をした。

「そう思いたければそう思えばいい。勝手にしろ」

レイはそう言うと、軍服をベットに置きシャワーを浴びに行ってしまった。

残された俺は未だに冷めない蒸気に一人悶々とする。

なんだよ・・・なんだよなんだよ・・・・!!!!!

勝手にしろだって!?!?

言われなくても、そうするよ!!!

あ〜〜〜〜もう!!!腹たつ!!レイの奴、絶対許さないからな!!

俺はムカムカとした気持ちを無理やり封じ込めようと、バッと勢いよくベットに入ると瞳を閉じた。



















翌日の早朝、いつものようにレイの物音で目が覚める。

まだ少し眠たい瞼をこすって俺はゆっくりと起き上がると、隣のレイをみた。

「おは・・・・」

途中で言いかけてハッと我に帰る。

絶対レイとは口きいてやんないって決めたんだ!

俺は何事もなかったかのようにベットから出ると、赤い軍服に着替えた。

チラっとレイをみると、あいつも普通に過ごしている。

逆にそれがムカついて俺はムッとしたまま何も言わず部屋をでた。

朝食とりにいつものようにメニューを選び、イスに座る。

「シン、おはよ」

そう言ってルナは俺の隣の席に座った。

「おはよ」

俺は堅くそう言うと、もくもくとパンを食べる。

「あれ?レイは?いつも一緒に食べてるのに」

『レイ』という言葉に俺は一瞬ピクリと反応する。

「知らないよ、あんな奴っ」

俺の言葉にルナは少し驚いた表情をした。

「何?昨日のアレで喧嘩したって訳?」

「べつに」

「どーせシンが何か言って、レイを怒らせたんでしょ。全く子供なんだからシンは」

「うるさいなっ!!文句言うなら隣に座るなよ!」

ルナは呆れたような表情をすると、立ち上がった。

「はいはい、わかりました!そうやってずっとしてなさいよ」

そう言い放つとメイリンの元にへとルナは歩いていった。

皆して俺が悪いみたいな感じでいいやがって・・・・。

益々むかつくなぁ!もう!!

荒々しくパンを飲み込み、オレンジジュースを飲もうと顔を少し上げるとそこには今一番会いたくない人物の姿が映った。

喧嘩の原因をつくった張本人はこれといって違うところはなくいつものように無表情で歩いている。

ただ違うのは、いつもその隣にいる俺がいないってことだけだ。

それは今の俺も同じことなんだけど。

そのまま無意識にじっとレイを見ていると、ふとその瞳とぶつかった。

だが、レイはそのまま視線をずらすと離れたイスに腰掛ける。

「む、無視したぁぁ!?」

またワナワナと怒りが込み上げてきた俺は、フンッとレイから顔を背けるように視線をずらした。

俺はまた悶々と食事を再開する。

すると、ふと耳に女の子独特の甲高い声が聞こえてきた。

「ねぇねぇ、みて!レイ・ザ・バレルがいるよー!しかも珍しく1人!」

「本当だ!いつもシン・アスカと一緒なのにー!もしかしてあの2人別れちゃったんじゃないの?」

「ありえるかもっ!!」

小声で喋っているつもりなのだろうが、俺にはハッキリと聞こえてくる。

俺はそのままぐっと気持ちを堪えて耳を傾けた。

「もしそうならさ、私達とっては今がチャンスよねー。他にも狙ってる子たくさんいるし」

「恋人と別れた後って、結構オチやすいしね」

「ちょっと行ってみない?行動あるのみっ」

「うん、行こっか!!シンと別れたんなら今しかないよね!!」

ガタっと立ち上がる物音が聞こえ、俺は思わず振り返った。

2人の女の子がレイに熱い視線を送りながら近づいていく。

別れただって!?俺とレイが!?

チャンスだって!?そんなのないに決まってる!!・・・・と思う。

あ〜〜とにかく!!レイに近づくんじゃない!!って事だけは強く思える。

気がついたら俺は立ち上がって、レイの元にへと走っていた。

あの女の子2人を追い越して、座っているレイの後ろに勢いよく到着すると俺は後ろからぎゅっとレイを抱きしめた。

卵を食べようとしていたレイの手がぴくりと止まる。

「別れてなんかないからなっ!!!!レイは誰にも渡さない!!!」

ただ夢中でそう言うと、またぎゅぅっと強くレイを抱きしめる。

俺から離れないようにと、望と確信を持ちながら。

女の子2人はきょとんっとした表情で俺をみると、苦笑して回れ右をし俺達から離れていった。

勝った・・・・・・・・!!

どこか満足感が溢れ出し俺は思わず笑う。

「シン・・・すごく嬉しいんだが、これでは食事ができない」

俺が一人自分の世界にいると、腕のなかのレイがどこか嬉しそうにそう言った。

そこで要約俺は我に返り、自分が今とんでもない事をしていることに気づく。

「うわっ・・・俺っ!」

思わずバッとレイから離れると、後ろに2,3歩後ずさった。

ゆっくりとレイは振り返ると、俺にむかって微笑む。

「お、俺、怒ってんだからな!」

恥ずかしさを紛らわせようと、必死にそう言った。

だけど、目の前のレイは微笑んだ顔を崩さない。

「俺からレイに話し掛けたりなんかしないから!!」

そう言ってもやっぱりレイは笑ったまま。

「何笑ってんだよー!!」

俺は一人真っ赤になりながら、声を荒げた。

「いや、シンが可愛いと思って・・・」

やっと口を開いたと思ったら、レイはまたとんでもない事を言いのけた。

「なっ!可愛いって・・・!!」

「怒っていたと思ったら抱きついたり、話し掛けないといいながら話し掛けたり・・・・」

くっくっくっと笑いながらレイは言う。

なんだか自分が情けなくなってきて俺は黙り込んだ。

顔が焼けるように熱くて、今にも蒸発しちゃいそう。

まともにレイの顔をみられる状況じゃない。

「シン」

俺が下を向いていると、レイに名前を呼ばれた。

少し戸惑いがちに顔をあげると、優しいレイの顔がそこにあった。

「こっちに来い」

優しく手招きをされて、微笑まれる。

ただそれだけなのに、魔法にかかってすいよせられるように俺はレイの元にへとちょっとずつ歩み寄った。

後もう一歩でレイの真前まで行く、という所で突然レイに腕を捕まれ引っ張られる。

突然の行動に体は傾き、レイに倒れ込む形となった。

顔と顔の距離は数ミリ単位。

今にも唇がふれそうで、目の前の奇麗な瞳は俺にとっては麻薬のよう。

その瞳から視線をそらせなくて、ただ甘い感覚に陥った俺はここが何処だとか恥ずかしさとか考えられる余裕もない。

お互いの視線を絡ませあうと、くっつきそうでくっつかなかった唇が触れ合った。

反射的に目を瞑ると、レイの手が俺の頭に回る。

とろけてしまいそうな感覚に、俺はひたすら酔った。

そっと唇が離れると、かち合った瞳に思わず笑う。

「冷たくして悪かった」

耳元でそう囁かれて、また顔の熱が一気に上昇していくのがわかった。

「俺も・・・ごめん」

小さく呟くと俺達はまた触れるか触れないかのキスをした。

喧嘩するほど仲がいい・・・・・って誰かが言っていたっけ。

嘘か本当か、それはわからないけど。

でも俺達の仲は深くて甘く繋がっている。












end







*おまけ*
「ちょっとあいつらどーにかしてよっ!?此処がどこだかわかってんのぉ!?」

「お姉ちゃん声が大きいよっ!」

「聞こえてないわよ!あの2人には!自分達の世界に酔いしれてるんだから。全く、朝からそんな甘い空気まきちらすなって感じ!」

「た、確かにね〜・・・・・」




end




かなり久しぶりの更新です・・・・。相変わらずレイシン好きです。
この2人の喧嘩って書いてみたいと思いこんな感じに。
なんかシンは勢いで暴走してしまいそうだなぁって勝手に思ったりして。(笑)
そして結局最後は甘いです。私の得意な甘い甘い最後です。(笑)
甘いのしか書けないだけなんですけどね・・・・・。

2005.05.04 Rinko