「ねぇねぇ、シン!ちょっと来てよ!」 その声に振り返ると、そこには笑顔のホーク姉妹が立っていた。 この2人に呼び出されるのは何か気が引ける・・・。そう考え少し眉を寄せた。 「何よ、その顔!べつに何もしないわよ!」 ルナが少し怒ったようにそう言ったので俺は慌てて言い訳をする。 「嫌だなんて言ってないだろ!」 そう俺が焦りながら言った瞬間、なぜか一瞬ルナはにやりと不適な笑みを浮かべた・・・気がした。 ゾっと背中に悪寒が走ったが、逃げ出そうにも逃げ出せないのでその場に突っ立っている。 「じゃあ、いいわよね!こっちに来て!」 そう言われ、2人に腕を捕まれながら歩かされた。 途中何度も足をつっかえそうになりながらも、どうやら2人の目的の場所についた。 そこはキッチンルーム。何でこんなところに・・・・・・?不思議に思い2人をみると、何やら微笑んでいる。 「チョコ、一緒に作ろう!」 メイリンが笑顔でそう言い、何かを渡してきた。 「なんだよコレ」 渡された物を俺は嫌そうにみつめる。 だってそれは、なんだかフリフリな白いエプロンで、俺には到底着れそうにも無いものなんだから。 一体、何をさせようというのか・・・・。俺は予測がつかずため息をはく。 「今日はバレンタインでしょ!レイに渡さないの?」 ルナがそう言って俺は思い出した。あぁ。そういやそうだっけ・・・・。 ミネルバ艦内で、女の子達が奇麗なラッピングをされた物を持っていた理由もわかる。 だけど・・・・ちょっと待てよ・・・ 「何で俺がレイにあげなきゃなんないんだよ。女が渡すもんだろ!チョコレートってのは」 「だって、レイとシンだと女役はどうみてもシンじゃん」 「それに、レイだってきっと欲しいと思ってるよ」 「・・・・嫌だよ」 2人にそう言われてもやっぱり気が引ける。 なんだって男の俺がバレンタインデーにチョコを作らなきゃならないんだ。 「ふ〜ん、べつにいいけど?作りたくないなら作らなくて」 「お姉ちゃんとあたしでチョコ作ってレイに渡すから!」 「バレンタインデーにチョコ渡す意味わかる?愛の告白よ、こ・く・は・く!」 「あたしとお姉ちゃんどっち選ぶかな〜?緊張する〜!」 「あ・シンは参加しないんだもんね。あたし達に取られてもイイらしいし〜」 2人で一気にそう言われ、俺はいてもたってもいられなくなった。 「と、取られてもいいなんて一言も言ってないだろ!!!」 「ふ〜ん、でもチョコ作らないんでしょ?同じようなモンじゃない」 「〜〜〜〜!!!作るよ!!!!」 ムキになって俺はそう叫んでしまった。 その瞬間2人は笑って、『じゃ、ソレ着てね』と笑顔で言いのけた。 「なぁ・・・、べつにエプロン着なくてもイイだろ?これ変だし」 「何言ってるのよ!その赤い軍服汚す気?エリートも形無しだよ!」 「う・・・・・・・」 そのメイリンの気迫に押され俺は渋々それを着るしかなかった。 くっそ〜〜〜〜!なんだってこんなメにあわなきゃなんないんだ!! 不満は募るばかりで、どうかこの事がヨウラン達にバレない事を祈るばかり。 だって、こんなフリフリのエプロン着てるとこをみられでもしたら、一週間はひやかされるに決まってる。 あいつの事だから、ミネルバ中に話をしそうで怖いし・・・・。 それにレイにみつかるのも嫌だ・・・・。こんな格好恥ずかしくて人前にさらせない。 俺が一人で悶々と考え込んでいると、2人に先を促された。 言われる通りに、分量を測ったり、まぜたり・・・次第に本気になっていく自分がいた。 「卵は少しずつ入れてね。ダマになっちゃうから」 「わかった」 気をつかって、少しずつ少しずつ入れて混ぜていると、そんな俺をみてルナは笑った。 「少しずつ入れすぎ!もう少し大目でも大丈夫よシン!」 そう言われ、バカにされてるような気がした俺はつっかかるようにルナに言った。 「悪かったな!!!!」 「も〜シンってばすぐ怒るんだから。ほら、次やんなくていいの?」 「うるさいな〜、ルナはいつも一言多いんだよ!」 「ちょっと、2人とも〜喋ってないで手動かしなよ。おいしくなんないよ?」 そう言われ俺は再びボールにへと目をやりもくもくと作業を続けた。 俺らが作っているのチョコレートケーキ。 食べるのはあんなに早いのに、作るのがこんなに倍に時間がかかるなんて思わなかった。 今度からお菓子を食べる時は作った人に労いの気持ちを持って食べるべきだな。 そんな事を考えているうちに、あとは焼くだけの状態になった。 「うん、あとは待つだけだよ!」 「楽しみだな!」 オーブンの中にある生地をみつめながらそう言うと、2人は微笑んだ。 生地を焼いている間は片付けの作業をすることになり、俺は汚したボールを洗う。 洗い物に熱中していると、気がつけば2人の姿がいないことに気づく。 「どこ行ったんだ?ったく・・・、作るだけ作って片付けないなんて、どーしようもないな!」 ムカムカとした気持ちで、再び作業を再開した。 全ての物を片付け終わり、後はケーキが焼けるのを待つだけとなった俺は、オーブンの前にイスを置きそこに座った。 ケーキが焼けるイイ臭いがあたりを包んでて、オーブンの中にある生地もほぼ固まっている。 空気の穴がぽつぽつと浮かび上がっているのも、なんだかおいしそうにみえた。 だが、俺はおかしなことに気づく。 「1つしかない・・・・・?」 そう、オーブンの中には俺の分のケーキしか入っていないのだ。 3人で作ったのだから2人分もあるはずなのに・・・・。 オーブンに入れるのは、確かルナがやってたよな・・・?じゃあ、あと2つの生地は・・・? オーブンをみつめたまま、俺は深く考え込む。 「随分な格好をしているんだな、シン」 俺が悶々と考えている時に、声が聞こえた。 聞きなれたその低い耳に残る声は、間違えるはずもないアノ人で。 俺はイスから飛び上がり振り返った。 目の前には優しく微笑んでいるレイがいて、その視線は俺を舐めるように上下している。 その仕草に、自分がとんでもない格好をしているのに気づき俺は慌ててエプロンを脱いだ。 「な、なんでこんなとこに・・・・・!!!!」 こんなところに、レイが来るわけない。なんだってこんなときに、測ったように現れてるんだよ! 驚きと恥ずかしさで俺はたまらなくなり、またイスに座り込んだ。 手には無意識にぎゅっとエプロンを握りしめたまま。 「2人に呼ばれた。ここに来いと」 「2人・・・・?ってまさか・・・・」 頭に浮かぶのはあの2人の笑顔。 やられた・・・!!!!!!!! 全部、のせられたわけって事かよ!?俺は悔しさで一杯になる。 おかしいと思ったんだ、いきなりチョコ作ろうだなんて。 レイに愛の告白するだなんて・・・!!! すさまじい完敗っぷりに、俺は呆れてため息をだしてしまう。 「すっかりハメられた・・・・・」 「そのようだな」 俺が一人落ち込んでいると、ピーっという音が聞こえた。 オーブンが焼けた合図だ。 「あ、できたかも!」 すっかり落ち込んでいた気分も忘れ、俺はワクワクしながらオーブンを開ける。 開けた途端にいい臭いがふわりとした。 今まで時間をかけて作ったものだから、余計に愛着がわいて俺はすっかり満面の笑顔。 「すごいな。シンが作ったのか?」 「うん、教えてもらったんだけどね」 「何のために?」 レイのその言葉に俺は少し黙ってしまう。 「な、何の為にって・・・・。今日が何の日かわかってるだろ?」 「・・・・さぁ、予測がつかないな」 はぁ!?そんなわけないだろ!!!! っと俺は嫌そうな視線をむけたがレイは相変わらずのポーカーフェイス。 どうやら、俺に言わせたいらしいことがわかった。 「・・・・レイにあげるためだよ」 これで満足か?そんな目でレイをみる。 やっぱ、少し照れくさくてすぐに視線をそらしてしまったけど。 「嬉しい・・・・喜んで頂いておく」 レイの濁りの無い微笑みにドキっと胸が高鳴った自分がいた。 「お、おいしいかわかんないけどね!」 照れ隠しにそう言って、俺はオーブンからケーキをとりだそうと持ち出した。 机の上に置こうと立ち上がった瞬間・・・・ 「あぁ!!!!!」 素手で掴んでいないため摩擦がとれず、慣れていない俺はせっかくできたケーキを真っ逆さまに落としてしまった。 「嘘だろ〜〜〜!?!?!?!?」 あんなに、手間かけて作ったのに・・・・!!!! 絶望感と、脱力で俺はふらふらになってしまう。 「怪我はないか?」 レイが優しく問い掛けるが、俺はふてくされたように首を横に振るだけだった。 だって、あんなに頑張ったものが一瞬にしてなくなってしまったんだ。 物凄くショックだったりする。 そんな俺にレイは優しく頭をぽんぽんっと数回触れると、型に少しだけ残ったケーキをつまみ口に入れた。 「おいしい」 そんな笑顔で言われたら・・・・・嬉しいとしか思えないじゃないか、バカ。 レイに見とれてしまいボ〜っとしていると、その隙に抱きしめられキスをされた。 !? 突然のことに戸惑ったが、レイの舌が入ってくると何も考えられなくなる。 とろけそうな感覚に腰がしびれるような感じがし、がくがくと膝がふるえて立っていられなくなる。 必然的にレイにしがみつき、よりかかってしまう体勢になった。 「誘ってるのか・・・?」 クスっと笑われながらそう言われ顔を赤くしてしまう。 「わかってるくせにっ・・・」 ボソっとそう呟くと、レイは微笑みながら言った。 「どうだかな」 露骨な嘘がまたカッコよくみえてしまうのだから、俺って変なんだろう。 なんでもないことまで、見惚れるくらいにハマってしまってる。 「俺は、こっちのほうが甘くて好きだしな」 「へ、変態!」 「今日はバレンタインだろ?シンがいれば十分だ」 「・・・・・・バカだよお前」 「そうかもな」 笑いあうと、俺達はそのまま快楽の渦にのめり込んだ。 「ん・・・・・・・」 その後腰が砕けるんじゃないかと思うくらいの行為をしてしまった為、俺は眠ってしまったらしい。 目がさめると、まだキッチンルームの中だった。 ちらかしたチョコレートケーキはレイが片付けたのか奇麗になくなっていた。 「・・・なんか寒い」 裸のまま眠ってしまったのだろうか?そう思い自分の体をみた。 「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」 大絶叫をした俺にレイが慌てたように駆けてきた。 「シン、どうした!?」 「レイ・・・・・お前・・・・・これは何だよ!!!!」 今の俺の状況は、まさに『裸にエプロン』。 どこかに投げやったはずのあのエプロンが、何故か裸の俺に着せられていたのだ。 こんな事ができる人間は一人しかいない。 俺がつめよると、レイはそんな事かというような顔をした。 「何って、裸にエ・・・・・・・」 言い切る前に俺は近くにあったタオルを投げつけた。 「言わなくていい!!!!」 俺はそのままエプロンを強引に脱ぐと、すぐに軍服に着替え部屋を出て行った。 レイの、むっつりめ・・・・・!!!!! ぷんすかと怒りを露にしながら部屋へ戻る道を辿っていると、あの2人に出くわした。 「お前ら!よくも騙したな!」 「ちょっと、ちょっと、そんな怒んないでよ。ラブラブできたからいいでしょ?」 「そうそう!あたし達に感謝するべきだよ!」 平然と言ってのける2人に俺は呆れるしかない。 「全く、もう今日はうんざりだ・・・・・」 「そうでもないと思うけど?だって、こんなにエプロン姿似合ってるんだし」 そう言ってルナは数枚の写真を笑顔でみせた。 それは紛れも無くあのエプロンを着てケーキを作っている俺の姿。 「いつのまに!?って・・・返せよ!!!」 俺は急いでそれを取り返すとビリビリに破った。 「べっつにいいけどね。焼き増しすればいいんだし〜♪」 「なっ・・・・・!!!!」 「シン、ごめんね?でもお姉ちゃんには逆らえないし・・・、悪く思わないでね」 そう言って2人は俺を残し化粧室にへと入ってしまった。 俺が文句を言える場所ではないので、しょうがなく諦めてそれを見送る。 -------------バレンタインなんか嫌いだ!!!! そう俺は心に叫んだのだった・・・・。 〜化粧室内にて〜 「これで金欠から免れるわ〜」 「もう、お姉ちゃんってばシンちょっと可哀想」 「何言ってんのよ!あんただって化粧品だとか何だとか買ってお金ないんでしょ?」 「う・・・そうだけど」 「それに、今回はエプロン姿だし!1枚売るだけでも高値がつくわね・・・・」 「でも・・・・」 「償いにレイと2人きりにさせたんだし!シンも満足してるわよ!」 「そうかな〜」 密かにホーク姉妹の密売が行われている事は、シンは未だ知らない・・・・・・・・ end |
バレンタインデー!っとゆう事でこんな感じになりました。 エロ書こうか、書かまいか悩んだんですが可愛らしい感じにしたかったんでやめときました。 でも、微妙に下品なネタで申し訳ない・・・・。 嫌いだったらすみません!「裸にエプロン」 でも、一人でシンに着せるレイを想像すると笑える。(笑) あと、さりげなくリクエストを使わせて頂きました。『ホーク姉妹に遊ばれるレイシン』 遠くから全身をみて、一人で満足してそうだ・・・・。 |